近年、「NPO法人で起業したい」という方が増えてきています。
『NPO法人って災害救援とか、環境保全などのボランティア団体なのでは?』
と思われている方も多いと思います。実際、NPO法人の正式名称は「特定非営利活動法人」です。
もっと噛み砕いて説明すると「特定の(法律で定められた分野の)非営利活動(株式配当のような利益の分配を行わない)を行う法人」となります。
「NPO法人で事業展開なんてできるの?」とお思いの方は、
- 非営利活動=ボランティア活動、無報酬(無料)で行うもの
という常識をちょっと横へ置いておき、下の「非営利の説明」を熟読してください。
NPO法人の「非営利」という言葉の意味について
会社(株式会社や合同会社など)というところは、売上から経費を差し引いて利益が出ると、出資者に分配することができます(株の配当金がそうです)。出資者は会社が儲かれば利益が配当されるので儲けることができるのです。これが法律上の「営利」という意味です。
NPO法人は「非営利」法人です。なので売上から経費を差し引いて利益が出ても、出資者(正会員)や寄付をして下さった方に分配することができません(配当金を出すことができないのです)。これが法律上の「非営利」という意味です。
もちろん、従業員は労働に見合った給料をもらうことはできますし、企業と同じようにボーナスももらうことができます。しかし、「本年度は多くの利益が出ているので配当金を出して会員や寄付をしてくれた方に還元しよう」といった事がNPO法人はできないのです。
では、利益はどうなるのか?といいますと、余剰利益は来年度の予算に使われることになります。この利益を設備投資などに使ってもいいですし、さらに次年度の会計に利益を繰り越ししても構いません。
「余剰利益は、会員や寄付者に分配するのではなく、次年度以降にさらに活動の規模を大きくする為に、活動の質を向上させる為に使用してくださいね。そして公益の増進を一層推進してくださいね。」というのがNPO法人なのです。
NPO法人の正式名称は「特定非営利活動法人」です。「非営利」という言葉が使われているので、無料(又は格安)でサービスを提供しなければいけないと思っている方が多いですが、そんなことはありません。分配をしなければ、普通の企業と同じように有料にして、(言葉は悪いですが)儲けてもいいのです。
こちらのページでも詳しくNPO法人の非営利の意味を説明しております。NPO法人の活動分野
さて、「非営利」の意味は理解していただけたでしょうか?この「非営利」の説明により、利益の分配さえしなければ、NPO法人でも事業展開が可能だ、ということになります。
ここでもう一度NPO法人の名称に戻りましょう。
NPO法人の正式名称は「特定非営利活動法人」、噛み砕いて説明すると、「特定の(法律で定められた分野の)非営利活動(株式配当のような利益の分配を行わない)を行う法人」と文頭で説明してきました。
正式名称を見てピンときた方もいらっしゃると思いますが、NPO法人には、
- 特定(法律で定められた分野)
という限定がついています。よって、法律で定められた分野以外のことを主たる事業目的として行うことはできないのです。
法律で定められたNPO法人の活動分野(20分野)
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
NPO法人で活動できる分野は上の20個の分野のみと法律で定められています。一つ一つの分野を細かく説明すると膨大な量になってしまいますのでここでは説明しませんが (こちらのページで説明しています)、
- 20個の分野に絞られている
というよりは
- この20個の分野にあてはまらない活動があるのか?
というぐらい幅広く設定されています。この世の中のほとんどの経済活動がNPO法人で実践可能と見ていいのではないでしょうか。
NPO法人は「公益の増進」のために活動する法人です
- 儲かっても利益は分配せずに、次年度以降に繰り越して使用する
- 活動内容も法律で定められた20個の中に該当する
2つの条件を満たしたから、NPO法人で即、起業可能!といきたいところですが、そう簡単に事は進みません。もう一つ大きな条件があります。
それは・・・・
- 活動内容が公益の増進に役立っていること
です。「公益の増進」というと言葉が難しいですので、次のような言葉に置き換えましょう。
- 「自分たちの儲け・利益のために活動するのではなく、みんなが幸せに暮らせる世の中を創るために活動しているか?」
具体的に例を挙げて説明していきましょう。
儲け一辺倒の考えで介護事業をNPO法人で行うことはできません。しかし、
- 「この地域で介護事業を行うことにより、●●地区の高齢者の生活の手助けがしたい。この地域の高齢者福祉の水準を引き上げるために活動するのだ!」
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
儲け一辺倒の考えでスポーツクラブ・スポーツジムの運営をNPO法人で行うことはできません。しかし、
- 「儲けを最優先にするのではなく、『スポーツの振興を図りたい』『子供の育成に役立てたい』『体を鍛える場として利用して頂きたい』という理念の元で経営していき、広く市民の役に立てたい!」
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
上2つと同じように儲け一辺倒の考えで「結婚相手紹介サービス」を事業展開していくことはNPO法人ではできません。しかしながら、
- 「過疎化が進んでおり、普通に生活しているだけでは多くの異性と知り合うことができない(そう簡単に結婚相手を見つけることができない)農村地域や漁村地域に住む方を対象に、出会いの場を提供し、現在の住所・職場を変えずに結婚生活を送れるようサポートし、過疎化をくい止め、地域の活性化に寄与したい」
- まちづくりの推進を図る活動
NPO法人で事業を行っていく際の最大のポイントは「自分達の儲けを最優先とせずに、『みんなが幸せに暮らせる社会創り』を最重要課題として取り組んでいるか?」というところにかかってきます。
「良いことをしているならば、利益は後からついてくる」
という考えの下で事業展開を進めてください。
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NPO法人の作り方
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行政書士甲子園法務総合事務所 代表
【藤井 達弘】
起業支援コンサルタントとして皆様の会社設立をバックアップいたします。
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日本実業出版社の「経営者会報」に4ページにわたり、適正な資本金について執筆いたしました。
女性起業家や起業家のたまごなど、頑張る女性を応援するマガジン『Born to win』に掲載されました。